平成17年度埼玉県内科医会総会が、平成17年5月14日、浦和パインズホテル3Fにて開催され、平成16年度事業報告の承認、

平成16年度収支決算の承認、第17年度事業計画、平成17年度収支予算の議決が行われた。

 その後、日本医大放射線科助教授 林 宏光先生から、

「マルチスライスCTによる最新の画像診断 ~切らずに診る人体 2005~」と題して、

最近の画像診断の進歩についてご講演いただいた。

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17年度 埼玉県内科医会(第43回)総会 平成17年5月14日

講演会

マルチスライスCTによる最新の画像診断 ~切らずに診る人体 2005~

日本医科大学放射線科 林 宏光

 

人体に手を加えることなく非侵襲的に複雑な体内の様子を知ることは、医療における長年の夢であった。この夢が現実となったのは、WC Roentgen博士によるX線の発見を端緒とする。

その後の研究により、X線には様々な物理・化学・生物学的特性があることが判明し、現在ではその透過、吸収の差により診断を助け、また生物学的作用をもって治療に利用されている。X線の発見により享受した恩恵には、計り知れないものがあるといえる。

放射線医学はX線の発見を期に誕生した若い学問であるが、わずか1世紀の間に数多くの発見や発明がなされた。この中で最も偉大な発明の一つが1972年 G Hounsfield博士らにより開発されたCTであることに疑いはない。

CTの開発により鮮明なデジタルの横断像として体内の様子を知ることが可能になった。さらにコンピュータ技術のめざましい進歩により、CTは短期間で長足の進化を遂げた。その最新式のCT装置がマルチスライスCTである。マルチスライスCTとは体軸方向に複数のX線検出器列を配置し、X線管球が1回転する間に複数の画像情報を同時に取得することが可能なCTである。マルチスライスCTを利用することで、短時間で(<10秒)、広範囲の(>1m)、その上、高分解能な(<1mm)画像情報が得られるようになり、これまで面として2次元的に評価していた人体を、容積として3次元的に捉え解析することが可能になった。

3次元的な人体を2次元的な検査法で評価するには少なからぬ困難を伴い、また2次元的な断層像を頭の中で3次元構築するには長年の訓練を必要とし、これを共有することはできない。X線の発見により切り開かれた画像診断は、『人体に手を加えることなく非侵襲的に体内の様子を知ること』から、『あるがままを立体的に表示し、治療支援画像として臨床に貢献する』ことにparadigm  shiftしつつある。今後CTは形態情報を基盤として、生理的情報などの機能情報も提供し得る非侵襲的診断法として、さらに進化してゆくものと期待される。



講演風景
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