5回 埼玉県内科医会・埼玉県内科専門医会

合同カンファレンス

症例検討会・提示症例

 

「繰り返す四肢脱力をきたした25歳女性」

 

埼玉医科大学 腎臓内科 井上勉、池田直史、鈴木洋通

 

【症例】 25歳 女性

 

【既往歴】23歳 腰椎椎間板ヘルニア、24歳 急性腎盂腎炎

 

【現病歴】当科入院1年前に嘔吐と四肢の脱力を主訴にA病院を受診、K 2.1mEq/Lであり、摂食不良による低カリウム血症と診断された。点滴によるカリウム補正にて症状の改善を認め、同日は帰宅となった。約2週間後、再び嘔吐と四肢の脱力を自覚し、翌日同院を再診、K 1.6mEq/Lと高度な低下が認められ、低K血性周期性四肢麻痺の診断で、精査目的に当院内分泌・糖尿病内科に転院となった。転院時、血清Cr 0.53mg/dl、静脈血pH 7.386、TSH 0.02μU/mL、甲状腺受容体抗体 1.3IU/ml、正常血圧であるが血清レニン/アルドステロンの上昇を認めた。入院加療後は食事摂取量が改善したにもかかわらず、継続的なカリウムの補充が必要であった。Bartter症候群も疑われたが、再検査でレニン/アルドステロンとも基準値内となり確定診断に至らず、カリウムを補充しながら、まずはバセドウ病の加療を継続する方針とし、thiamazole 10mg/day投与開始後に退院となった。退院後、eruthyroidの状態が継続し、thiamazoleが不要となった後も低K血症は継続、内服のコンプライアンスが悪化したことをきっかけに、再び四肢脱力が出現した。同科受診時K 1.9 mEq/Lまで低下しており、再入院となった。

 

【入院時身体所見】

身長 153.2cm、体重 38.5kg、BMI 16.4、血圧 96/54mmHg、胸部 ラ音無し、心雑音無し、腹部 特記すべき異常なし、両下腿浮腫無し。

 

【入院時検査所見】

動脈ガス pH 7.341、pO2 93、pCO2 28.3、cHCO3 14.9

TP 8.7g/dl、Alb 4.8g/dl、CK 138IU/L、AST 15IU/L、ALT 11IU/L、LDH 170IU/L、ALP 233IU/L、Cr 0.50mg/dl、BUN 11mg/dl、T-Cho 136mg/dL、Na 139mEq/L、Cl 112mEq/L、K 1.9mEq/L、Mg 2.3mg/dL、Ca 9.3mg/dL、IP 1.7 mg/dL

WBC 7250/μ、RBC 459x104/μ、Hb 14.9g/dL、Ht 40.9%、Plt 19.2x104

IgG 1882mg/dL、IgA 278mg/dL、IgM 63mg/dL、C3 80mg/dL、C4 23mg/dL、RF 47IU/mL、ANA-FA 80倍、fT3 3.74ng/mL、fT4 1.73ng/dL、TSH 0.90μIU/mL、アルドステロン 185.0pg/mL、レニン活性 9.9ng/mL・hr、抗TPOAb 2.3U/mL、TGAb-PA 400倍、TR-Ab 1.0IU/mL

 

【入院時画像所見】

胸・腹部レントゲン 特記すべき異常所見無し

腹部超音波検査 腎臓:両腎の錐体はhyperechoicに観察され一部ではacoustic shadowを伴っている。Sizeは両腎とも正常範囲内で、皮質の輝度上昇や菲薄化は認められない。その他:肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓に明らかな異常所見は指摘できない。