平成18年 新年講演会
「高血圧の最新診療 〜薬剤の選択と降圧のゴール〜」
自治医科大学循環器内科 島田 和幸
高血圧治療の最大の目的は,血圧を低下させ、心血管系疾患の発症を抑制することである。これまでさまざまな大規模臨床試験の結果から,血圧管理によって主要心血管イベントを抑制できるという成績が示されており,厳格な血圧管理の重要性は明らかである。また近年、家庭血圧計やABPMの普及によって、診察室以外の血圧値がより重要であることも明らかにされつつある。すなわち白衣高血圧や仮面高血圧、さらに夜間血圧や早朝血圧が患者の予後をより密接に表現することがわかってきた。このような背景の中、我が国の改訂ガイドラインJSH2004では、「より厳格な降圧」を提唱しており、この観点からの降圧薬の選択は、血圧レベル・年齢・併存するリスクファクターや合併症・臓器障害など多様な患者集団に対しても24時間持続した降圧効果が得られることが条件となる。現在の降圧薬は服薬コンプライアンスを重視し過ぎたために、1日1回の服用で翌朝まで効果が持続する「真の長時間作用型の降圧薬」といえる薬剤は決して多くない。種々の薬剤の組み合わせ、1日2回服用するなどの方策を講じる必要がある。このような中、新しく上市された長時間作用型Ca拮抗薬のアゼルニジピンは,持続的な降圧効果を持ちながら,従来のCa拮抗薬で課題とされてきた交感神経系の亢進による心拍数増加をもたらさない薬剤として期待されている。
現状での降圧治療中の患者の血圧レベルは、決して満足するべきものではない。それはかつてわが国においては血圧を十分下げることの危惧が強調され過ぎたきらいがあったからである。しかし今や高血圧診療は、血圧変動をきたす要因を考慮し、診察室以外の血圧値を活かした厳格な血圧管理が必要な時代となった。